第四書 恋

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 美桜は首を傾げた。  優秀なダンス講師をクレアが呼んでくれたのだろうか?  朝食を終えた美桜は、クレアたちとともに広間へと向かった。  練習用というのだから、魔法の錬成場のように実用的な空間だろうと美桜は思い込んでいた。  しかしその予想は、いい意味で裏切られた。  広間の天井には繊細な装飾が施されており、床はなめらかで光沢のある大理石でできていた。  周りには立派な柱が並び、その柱の上部には華麗な装飾が施されている。  窓には大きく透明なガラスが使われており、広間には自然光がたっぷりと差し込んでいた。  また、壁面に大きな鏡が設置されており、ダンスを練習するのにぴったりだった。  この美しい広間で踊ることができるのなら、きっと素晴らしいダンスが身につくに違いない。 「クレアさん、まずは簡単なステップから教えてくださいますか?」  美桜がクレアを振り向くと、そこに彼女の姿はなかった。  クレアだけでなく、ほかの侍女たちの姿もない。  美桜は戸惑い、周りを見回してもう一度侍女たちを呼ぶ。  しかし、美しい空間に美桜の声が響くばかりで、答えが返ってこない。
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