序章

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 周囲の友達にはその悩みを打ち明けることができず、美桜は孤独を感じていた。  友達と楽しく過ごす一方で、家に帰るとその笑顔が消え、家庭内での自分を隠していた。  その悩みは森の美しさに包まれて、美桜の心を少し和らげてくれる。  けれど見知らぬ森に対して、不安も感じた。  そのとき、可愛らしい白ウサギが茂みから飛び出てきた。  美桜は目の前に現れた可愛らしいウサギに目を奪われ、森の不安を一瞬忘れた。  ウサギは美桜に向かってピョンピョン跳ねながら近づいてくる。  美桜はウサギの無邪気さにほほ笑み、その可愛さに癒された。 (触れるかな)  美桜の手がウサギにふれると、ウサギは心地よさそうに目を細めた。  そのやわらかな毛並みにふれた瞬間、美桜はほっとする気持ちに包まれた。  ウサギは美桜の手のひらに顔をこすりつけながら、その甘い鳴き声で美桜をさらに安心させる。  穏やかな時間も束の間、ウサギのうしろの茂みから、突然巨大な狼が躍り出た。  通常の倍の大きさはあろうかと思われる黒い獣が、歯を剥き出しにして攻撃態勢を取る。
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