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美桜は驚き、恐怖に震えながらあとずさりした。
ウサギも狼の存在に気づいて慌てて逃げ去る。
狼は凶暴な目で美桜をにらみつけ、威嚇するように唸り声を上げた。
美桜は逃げようとするものの、足が震えて動かせず、窮地に陥る。
そのとき唐突に、ジーンズのポケットに入れておいたスマホのアラームが鳴り響いた。
狼は驚いた様子で後退し始める。
しかし、アラームはすぐに消えてしまい、狼はふたたび美桜に向かって襲いかかろうとした。
美桜は慌てたせいでスマホを落としてしまい、スマホは狼の足元に転がってしまう。
巨大な狼の前に立ち尽くし、食べられてしまうのではないかという恐怖に美桜は震え上がった。
「そこの娘、動くな」
男の声が上のほうから聞こえて、美桜はハッとそちらを見る。
木の上から、マントを羽織った青年が颯爽と降り立った。
彼はなにかを素早く唱えて、光る魔法陣を地面に描き、炎の塊を狼に向けて放つ。
狼は炎に包まれ、悲鳴をあげながら倒れ伏した。
青年の目は冷たい。狼を討ち倒すと、彼は美桜を振り向いた。
「無事か?」
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