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青年は美桜に告げた。
その言葉に安堵感を覚え、美桜は彼の腕のなかで少しだけ落ち着きを取り戻す。
見知らぬ青年だというのに、彼の温かさと優しさに包まれた瞬間、信頼できると感じた。
しかし美桜の涙は、恐怖と混乱によってなかなかとまらない。
青年は美桜をゆっくりと抱きしめながら、安心させようと努めてくれた。
彼の優しさと強さにふれることで、美桜は少しずつ心を落ち着かせていく。
けれど美桜の心のなかにはまだ多くの疑問が渦巻いており、涙がやんだあともその不安は消え去らなかった。
「落ち着いたか?」
泣きやんだことを察したのか、青年が言う。
美桜は青年からゆっくりと離れ、彼の顔を見上げた。
「はい、少し落ち着きました。
ありがとうございます」
青年はほほ笑む。
「そうか。
だが、まだこの場所にいるのは危険だ。
俺がおまえを安全な場所に連れていく」
美桜には彼に聞きたいことが山ほどあった。
けれどおとなしく彼にうなずき、彼のリードに従うことにする。
美桜はこの見知らぬ場所で、彼が頼れる唯一の人物であることを感じていた。
青年は美桜の手を取り、森を抜ける方向へ歩き出した。
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