序章

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 森を抜けると、目の前に広がるのは息をのむほど美しい野原だった。  緑豊かな草原がどこまでも広がり、青空に映える白い雲がゆったりと流れている。  野原には色とりどりの花々が咲き誇り、その香りはやさしく風に乗って漂ってくる。  遠くには青く輝く山並みが連なり、その景色は絵画のようだ。  時折、野原を駆ける可憐な野生のウサギや小鳥たちが、美桜の目に映った。  草原を照らす陽光は暖かく、まばゆいばかりの光が心を和ませる。 「すごく綺麗な場所ですね」  美桜が感動する。  エリオは誇らしげに言った。 「そうだろう?  アーデリアは世界一美しい国なんだ」 「本当に素晴らしいです。  こんなに素敵な景色があるなんて、思いもよりませんでした」 「この国には素晴らしい景色や文化がたくさんある。  だが、それだけではない。  ここには困難や試練も存在する。  王国民がひとつになって、それに立ち向かっているんだ」  美桜はエリオの言葉に耳を傾け、国に対する彼の愛情と誇りを感じた。  この見知らぬ国に、美桜は興味を抱き始める。 「ここからは馬だ」
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