三話

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三話

 11歳になる誕生日の前の日。家族が誕生日パーティーをしてくれた。  大きなケーキに、普通の照り焼きのチキンと甘辛いチキン、サラダにコーンスープ。野菜とらなきゃってのは分かってるけど、こんな日くらいいいよねってチキンばっかり食べちゃった。ぼくは甘辛いのが好み。  弟妹が「おっきいケーキ!つき兄ちゃんばっかりズルイ〜」って騒ぐから、ぼくが大きく切ってわけてあげた。 「これだけ大きく切ったらいいでしょう?」 「わーい、つき兄ちゃん大好き〜」 全く、子供はげんきんだなぁなんて、ぼくも子供なのに思ったりした。  お母さんとお父さんは相変わらず悲しそうな、涙を堪えたような顔をしている。  ぼくの誕生日なのにそんな顔しないでよねって思ったけど、ぼくが本家に行くのそんなに寂しいんだね、ぼくって愛されてるな〜と思うと何も言えなくて。  ケーキを頬張ってホッペにクリームつけて楽しそうな弟妹の顔も毎日は見られなくなるんだ…と思うと少しだけシンミリした。    次の日、学校から帰ってすぐに本家に向かうことになった。  お母さんと二人、荷物を持って、ランドセルをしょって本家までの道を歩く。  弟妹はお父さんと留守番だ。  昨日まであんなに元気だった二人が「行っちゃやだ」って泣き始めたから、ぼくも少しだけ泣いた。  二人を抱きしめて、「またすぐ会えるから、お父さんとお母さんをよろしくね」そう言うと、泣きべそのままで二人ともコクコク頷いてた。    ぼくだって寂しいよ。我慢してるよ。  でも、本家の長に選ばれたって、スゴイ事だってくらいは知ってる。長に従わなきゃここでは生きていけない。  そう、幼い頃から教えられてる。まだ見たことない本土ではどうかは知らないけど、ここではそうなんだ。  歩いていたら、ふと、見慣れない子供がこちらを見ていた。  この島の人間ならほとんど知ってるはずなのに、知らない、ぼくと同じくらいの年に見える子供。  誰だろう。  こっちを見てる癖に何も言わないから、ぼくも何も言わなかった。  旅行…で、来たのかな。
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