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五話
久耶はいつも退屈だった。
長い年月を生きてきて、家族と呼んでる同族以外には仲の良い者も作れない生活。一所には留まれない宿命を負い、変わらぬ毎日に退屈していた。
そう、彼の家族は永遠の時を生きる吸血鬼だったから。
家族は皆、年々外見的に成長して見せ、また違う土地に移る時に若々しい外見に戻す生活をしていた。
久耶はその言動から、小学生高学年の外見をとることが多く、気が向いては学校に通ってみたり、公園で同じ世代にみえる子供たちと遊んだりもした。でも、その場限り、仲良くなりすぎてはならない者ばかり。
退屈で孤独で、結局分かりあえるのは家族だけだと思っていた。
久耶の一家はあまり一所に長くは暮らさない。一家と言っても久耶を入れて三人しかいない。
今回は、誰が見つけてきたんだか、本土からは離れた小さな島に住むことになった。
兄と姉と呼んでる二人が少し散策し、島の人間と話したところ、ここは同じ一族の親戚の者ばかりが住んでいるらしいことが分かった。親戚ばかりの島では俺たちは目立ってしまうだろう。旅行で来たということにし、気分転換したらすぐに本土に戻ろうという話になった。
自然豊かな田舎のはずなのに、船着き場とヘリポートだけはやたらと近代的で豪華なこの島。なんだかアンバランスで不思議で、少し興味が湧いた。まぁ、またすぐ移動するからそれまでの暇つぶしでしかないね。
久耶は強すぎる感受性故に、数百年に一度、自分の血と合う者の心の声が聴こえてきてしまうことがあった。血と合えど、その者が久耶と一緒に永遠を生きる選択肢をしてくれたことはない。
どんな者かと遊びがてらその者の素性を調べてみたり、ナンパのようなことをし、血だけ頂いたりしていた。永遠の時を一緒に生きてくれる人間なんて現れるはずがない。永遠の時なんて、死んでるようなもんだって言われた時もある。
なんのイタズラか、この小さな島でも心の声が聴こえた。
まさかこんな小さな島で出逢うとはね。
今回も自分に着いてくるわけない。姿を見るだけ。単なる好奇心。永遠を生きるための暇つぶし。
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