幼くも馴染んでもなく

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「よく分かったねー! 沙絵ちゃん、名探偵みたい」  あの日私にしたように、 「そっか、沙絵ちゃんは、未緒が鍵を盗めること、知ってるもんね」  その大きな身体を凶器にして、 「ステージのところに潜んで、照明をチカチカさせたんだー。不思議に思って先生がステージに上がってきて調べているところを、後ろから突き飛ばしたんだよ」  自分にとっての敵を確実に倒していく。 「姿は見られてないから、完全犯罪成功。でもまさか、一ヶ月も入院するなんて思わなかったな。ねぇ、沙絵ちゃんは、このこと誰かに言う?」  珍しくいっぱい喋った未緒ちゃんは、頬をさらに赤くして興奮気味に私に聞いた。 「……言わないよ」  それだけ伝えるのがやっとだった。  トウモロコシ畑の傍の道を抜けて、私たちは学校にたどり着いた。周りからはいつも通りに見える、だけど私たちにとってはいつも通りではない今朝の通学路。 「じゃあね、沙絵ちゃん」 「うん、じゃあね」  校門のところで別れながら、どうしてだろう、未緒ちゃんとはまたすぐにクラスで会うのに、家も隣なのに、もう二度と関わりを持たないような気がした。しかも、何故かそのことが残念なような気もした。不思議に思ったけれど、すぐに仲の良い友達に声を掛けられて、そんな気持ちもどこかに飛んでいった。
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