幼くも馴染んでもなく

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 通学路は大きなトウモロコシ畑に差し掛かった。収穫前の畑は、たくさんの緑の作物が真っすぐに高く伸びていて賑やかだ。入り込んだら迷いそうなほどに。畑の向こうには、私たちの通う小学校が見える。田舎っぽい、のどかな風景。 「じゃ、もう一緒に学校行くのナシね。それとさ、あとさ、」  私には、どうしても言いたいことがもう一つだけあった。未緒ちゃんがぼーっとした顔を私に向ける。再び勇気を振り絞って、私は言った。 「未緒ちゃん、佐藤先生にケガさせたでしょ」  先生の未緒ちゃんへの対応は酷いものだった。普段から注意がキツイし、心からこの子をバカにしている様子だった。何でも言っていいと思っているみたいな。多分、普段から先生は、未緒ちゃんみたいなタイプの女の人全員にムカついているんだろう。 「何で? 未緒が?」  未緒ちゃんは目をぱちぱちさせた。  何でって、私は知っているよ。  未緒ちゃんの中には、ちゃんと怒りの感情があるってこと。  目的のためなら、簡単に暴力をふるえるってこと。 「だってさー、未緒ちゃん、先生がケガした日、遅くまで学校に残ってたでしょ。昔よく、二人で職員室から鍵盗んでたしさ、それで体育館に入り込んで、先生待ち伏せしてたんじゃないかなーって」  だけど私は、未緒ちゃんの本性については触れなかった。それっぽい理由を言いながら、これが私の勘違いだったらいいのにって思った。  だけど未緒ちゃんは、目を細めながら、 「沙絵ちゃん、すごぉい!」  そう言って楽しそうに笑った。
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