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表情を見せない男
「はじめから看護師を疑ってたんスか?」
「国内でデソモルヒネを扱うなら医療関係者をまず疑うべきだ。ガソリンの臭いも現場に残っていた」
「そんなのよく知ってたっスね」
「ロシアの貧民街で、ちょっとな」
沓宮の表情は見えない。
「『リスト』のデータは公表しないそうッス」
「圧力……か」
「まあ、上の命令は絶対ッス」
沓宮は応えない。
「曽我部 葵の娘、いろはを殺害したのは政治家の牧瀬 大二郎でした。曽我部夏彦は娘の仇を取ろうとして返り討ちにされたみたいッス。牧瀬は現在、逃亡中ッス。ライカンスロープはもういない——。警察がしっかりロリコン野郎どもを撲滅しないと。——ッスね」
「それは、どうだろうな」
「え?」
進藤が尋ねるとややあって沓宮が答える。
「伝承ではライカンスロープは伝染するという。——この都市という『森』のどこかで、爪を研ぐ者が潜んでいるかもな…」
「——あれ? もしかして沓宮さん」
ニヤついた進藤が沓宮を覗きこむ
「失恋して泣いてます?」
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