追いかけられるロリコン議員の男

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追いかけられるロリコン議員の男

——なぜこの牧瀬大二郎が、秘書も連れずこんな山奥で熊に追いかけられなければならんのだ。  一見、その獣の追いかけるさまは、じゃれつくようでもあり、遊ぶ相手を探すような趣きこそあるが、冗談じゃない。あんな化け物に捕まれば命はない。  しかし、この大二郎、幾度も死線は潜ってきた。  逃げるのは得意だった。  熊ころ一匹、撒けぬ私ではない。  もし生きて帰れたら  天使ちゃんに癒してもらわなければ。 ——ことが落ち着いたらまたあらたな天使ちゃんをさがそう。  つぎは二歳児がいい。  曽我部の頭のイかれたクソ女はどうせ死刑だろう。  リストは私が取り返した。  もう恐れるものはない。 ——そう思った瞬間だ。  何かを踏みつけ、私は壮大に転んだ。  踏んだのは古いヒーローのビニール人形のようだ。  汚い子供の字で名前が書いてある 『なつひこ』 ——ドスン  体に想像を絶する重量がのしかかる。 ——雷鳴に似た咆哮が天を衝いた。
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