17人が本棚に入れています
本棚に追加
追いかけられるロリコン議員の男
——なぜこの牧瀬大二郎が、秘書も連れずこんな山奥で熊に追いかけられなければならんのだ。
一見、その獣の追いかけるさまは、じゃれつくようでもあり、遊ぶ相手を探すような趣きこそあるが、冗談じゃない。あんな化け物に捕まれば命はない。
しかし、この大二郎、幾度も死線は潜ってきた。
逃げるのは得意だった。
熊ころ一匹、撒けぬ私ではない。
もし生きて帰れたら
天使ちゃんに癒してもらわなければ。
——ことが落ち着いたらまたあらたな天使ちゃんをさがそう。
つぎは二歳児がいい。
曽我部の頭のイかれたクソ女はどうせ死刑だろう。
リストは私が取り返した。
もう恐れるものはない。
——そう思った瞬間だ。
何かを踏みつけ、私は壮大に転んだ。
踏んだのは古いヒーローのビニール人形のようだ。
汚い子供の字で名前が書いてある
『なつひこ』
——ドスン
体に想像を絶する重量がのしかかる。
——雷鳴に似た咆哮が天を衝いた。
最初のコメントを投稿しよう!