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ペットを売る男
『子供は国の宝だ』
経営する『ペットショップ山野』店内のTVから牧瀬 大二郎議員の言葉が聞こえる。
信じられない話だが、アジアの貧しい国では、実の親によってフリマアプリのようにSNSでお手軽に子供が売られてしまう。値段も日本円で一万円以下だと言う話だ。心底、怒りを覚える。ふざけた話だ。ゆるせない。
——安すぎる。
下の料金表を見てほしい。
【乳児】生後〜一歳未満 1,000,000円〜
【幼児】一歳〜六歳 3,000,000円〜
【児童】小学校卒業まで 100,000,00円〜
生活環境、家柄、性別、外見、身体的特徴によって値段の増減はあるが概ね上記のような値段設定が日本児童の相場だ。
子供は国の宝だ。
国内でのこのビジネスの需要は高い。
あの妻子がいる人気俳優も、有名な通販会社の社長も、あのスポーツ選手も、日本改革を掲げるあの政治家も、みんな小さいお友達が大好きなのだ。
通りを歩くだけで大金が落ちている感覚だ。今すれ違った家族の兄弟は、——妹が百七万円で、兄が二百八十四万円——いや、兄弟セットなら五百万円で売れるかもしれない。
さらに、あそこにも三百万円、あっちにも百万円。
下校時間が過ぎたばかりだから一千万円の大群が横断歩道をキャッキャと渡っている。実に可愛らしい。
もちろん、利益が高いぶん危ない橋も渡るし、リスクも高い。ひとつのミスが命取りだ。
だから——。
『リスト』の盗難は事故だった。絶対に自分に落ち度はなかった。
店に血を思わせる紅い手紙が届いたのは今朝のことだ。
判決文にも似た文句が殴り書きされている。
【罪人をライカンスロープの刑に処す】
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