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スマホとパソコンを睨む男
誰もいない会議室で沓宮がなにやらパソコンとスマホを交互に睨みつけブツブツひとりでやっている。
「猟友会から報告はないそうっス。熊も発見されてません」
「……だろうな」
沓宮がそっけない返事を返す。
「てか、坂田修や山野、最低でも六人はやられてるって話っスよ。 半グレだったりペットショップ店長の山野も児童売春の前科があります。熊が悪人をみわけて襲いますかね? 嶋くんから聞いたんスけど、被害者の体が妙だって。しかも、脅迫状めいたものが届いてたとかって話っス」
合コンに呼んだ代わりに嶋くんは情報と美容液をくれた。身元が割れた被害者たちの持ち物や自宅には共通したメッセージの赤い手紙が見つかったらしい。
【罪人はライカンスロープの刑に処す】
「……ライカンスロープ——狼人間。ウェアウルフ、ワーウルフなどの比較的ポピュラーな呼称ではなく? ……狼男の刑ではだめだったのか?」
「厨二病なんじゃないっスかね。ホシは沓宮さんと気が合いそうスね」
軽口に沓宮は動じず続ける。
「例の写真はみたか?」
「あぁ例の狼男が写ってるって写真ッスね? あれこそ眉唾ッスよ。今の時代画像加工なんて高校生でもできちゃうんスから」
問題の画像は、夜ということもあり画質は悪いが、昔、流行ったビッグフットの写真を思わせる姿で、横向きに歩く狼男が映っているように見えなくもない。ピンと立つ三角の耳、大きく裂けた口はまさに狼男といった感じだ。
「それはそうッスけど…。ところでさっきからなにむつかしい顔してスマホ睨んでるんすか?」
「明日、看護師の『まる子さん』を展示に誘おうと思ってるんだが、なかなか文面が定まらないんだ」
「なんスか、乙女みたいで気持ち悪いっスよ。沓宮さん」
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