議員秘書の男

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議員秘書の男

 議員秘書の仕事で最も重要な仕事は何か?  牧瀬先生の政治活動に障壁となるトラブルを解決することだ。  誹謗中傷や脅迫状などざらだし、女性問題を金で解決することもある。  先生の女性の趣味は独特なので、揉み消——解決するのもひと苦労だ。  初仕事は数年前。  ある芸術家の娘を先生が殺——誤って死なせてしまったときも、死体を業者に始末させた。国のためとはいえ骨が折れる仕事だ。結局、後にヒーローぶって先生のところに殴り込んできた芸術家も処理する羽目になった。  どうせならいっぺんに依頼して欲しいものだ。 「畠中くん、君あっての牧瀬大二郎だ」 先生がそう言うときは、決まって面倒が起きたときである。  死体処理業者の坂田修が消えたらしい。  ペットショップの山野とも連絡がとれない。  そのほかにも行方不明者は片手では数えきれないほどにも及んだ。——そこで、ある『リスト』にいきつく。  児童売買に関わった人間が消されている。  山野の足取りを探し、とある山中に山野の車を見つけ、手がかりを探すがめぼしいものはない。 ——ガサ  物音がしてミラーを確認する。  バックミラーには信じられないものが写っていた。  狼男だ。狼の頭をした人型のなにかがこちらに向かってくる。  急いでキーを回す。  エンジンがかからない。  キーを回す。  かからない。  くそ!  キーを回す。  頼む。  くそッ!なんでだ!  もう一度、もういち—— ——ドン  間一髪バックした軽自動車のリアバンパーが狼男を勢いよく捉え、タイヤが乗り上げる。 ——ガタン…ゴリ ——やってやった!狼男を轢き殺してやった!近寄って顔を拝んでやる。——狼男なんでいるはずがないのだから。 ——狼面を剥いで私は驚愕した。  私が車で轢殺した狼男はペットショップの山野だった。  鈍い音で後頭部に痛みが走り、私の意識はそこで途切れる。
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