呪いと願い

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あなたには辿り着きたい場所があるだろうか もしあるのなら蓮の花が刻まれている指輪が目の前に現れるかもしれない その指輪は人の想いに引き寄せられる 辿り着きたいと強く願った人の目の前に現れ その指輪を身に着ければ霧の中に続く道まで導かれて その道の先には願った場所があるという そんな素敵な指輪に蓮の花が刻まれているのは 蓮の花から生まれたからだと言われている この指輪が生まれる少し前 ひとつの国に新しい命が生まれた その数がひとつだったなら 蓮の花が刻まれた指輪は生まれなかったかもしれない この国に生まれてしまった双子の命 この国では双子の命のどちらかが呪われて生まれてきてしまう その呪いは呪われた子が呪われていない子を殺してしまう呪い 呪われた命は誰もが嘆く存在だった 姿は貧弱で心は脆弱な今にも消えてしまいそうな双子の妹 呪われなかった命は誰もが羨む存在だった 姿は美しく心は清らかでさらには才に恵まれた双子の姉 そんなふたつの命を残酷な時間の流れは簡単に呑み込んでしまった 双子はとても仲が良かった けれど成長した妹は自我とは関係なく無意識に姉を殺そうとしてしまう 何かに取り憑かれたように その呪われた姿に両親は選んでしまった 呪われた子を殺すことを いつだって選ばれる方は決まっている 命の価値は”理不尽に”平等だから 『優秀な姉を失うわけにはいかない』 それだけで殺すには十分な免罪符になってしまう 呪いにかかっている だから死んでくれと そう妹は両親に言われた それを聞いて妹は走った 遠くに遠くに走った それは殺される恐怖からじゃない 自分の呪いが姉を殺してしまわないように もしこの世界にふたりが一緒に過ごせる場所があるなら教えて欲しい どんなに願っても体は心とは反対に動いてしまう そのとき妹は悟った 自分はどこまで走っても姉を殺してしまう ならこのまま ここで そんな思いで歩き出した先には蓮の花が咲いていた この国には不思議な指輪が存在する その指輪を身に着ければ願った場所に導いてくれる不思議な指輪 それは記憶の中にある美しい場所かもしれなし 唯一の大切な人の元かもしれないし 心地良い眠りの中で見る夢の中かもしれない 指輪がその願いを導き続けるのは 誰よりも強い願いを持った誰かを探しているからかもしれない
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