【宮宿】

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【宮宿】

 金山駅で集合して、東海道――現在の国道一号線を行く。清々しいほどの青空だ。明日の午後から雨が降るとの話だったが、それまでには辿り着いているだろう。万が一のこともあるが、ひとまずは今日降らなければそれでいい。歩き始めて一時間もしないうちに熱田神宮に到着した。旅の祈願には伊勢神宮然り熊野速玉大社然り、神頼みはしておきたいものだ。しかし本殿に向かうと、境内は人の波に覆われていた。 「……なんか、混んでるな?」  ゴールデンウィークだから、とも思えるが、それにしては人が多い。何やらイベントがあるのだろうか、参道の端にはパレットと絵具、画用紙を広げた子供たちが大勢座り込んでいた。 「絵描きのイベントですかねェ」 「本殿はいいヤァな、違う社に行こう」  と、探し見つけたのが南新宮社とある赤い社であった。賽銭を投げ入れて、ひとまずは旅の出発の報告のみを。出発しようとして、M後輩が携帯を構えていた。――が、何やら若い男女がのそりのそりと社の前に来てしまった。こちらに気づいていないらしい。しばらく待っていたが、画角から出ることはなく、後輩はシャッターを切った。 「残念だったな」 「最近テレビでもやっているでしょう、『消してやるのサ!』ッて」 「そんなに上手くいくものなのかねぇ……」  しばらくそうして格闘していたが、残念そうに画面を見せるばかりである。消えたは消えたが、背景にアラが目立つ。所詮は機械だ、期待するものでもない――と、声を上げたのは後輩だ。 「先輩、先輩」  多少背景は歪だが、随分綺麗に編集された写真であった。赤い社が、人のいた部分だけ若干薄赤になっているが、賽銭箱の輪郭や板目の模様もそれらしい。 「……いやァ、機械ってナメてたな」 「消してやれました」
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