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「でっかいカラスだなあ」
小学三年生の時、遠足でお弁当の唐揚げを奪われて以来カラスには一方的な怨恨があった。
取られたのは唐揚げだけだったけど、周りの食材にも菌がついてしまったかもしれないから、先生にそのお弁当はもう食べない方が良いだろうと言われたのだ。
蓋を開けてすぐのことだったから、結局私はその遠足で昼食をとることができなかった。
歩くのは面倒で疲れるし、美しい展示物や珍しい動物を見ても、日差しがきついから早く帰りたいという気持ちが感動に勝ってしまう。
遠足は嫌いだった。母が作ってくれる冷めた美味しいお弁当を食べることだけが、遠足の唯一の楽しみだったのに。
あの日からいつもはカラスを見かけても絶対に近づかないし、目も合わせないようにしていたのだけど、今目の前にいるカラスには不思議と嫌悪感は抱かない。遠足での出来事も、可愛らしい、遠い昔の思い出だ。
カラスが私のことなど眼中にないといった様子でさっさと前に進んでいくので、私もなんとなくそれについて行く。
左右の足を交互に出して、人間みたいに歩くんだな。なんとなくぴょんぴょん跳ねて進むイメージがあったから、意外だ。色々な歩き方ができるのか、種類によって違うのか。正直そこまで興味はない。
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