雨男

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雨男

朝からしとしと雨が降る。せっかくの休日なのに。 私は寝癖が付いた髪をドライヤーで整えてからため息をついた。スマホには 「今日は潜りに行けないね。潜り初めしたかったのに残念」 とダイビング仲間からラインが入っていた。ほんとに残念だわ。楽しみにしてたのに。 「日向子(ひなこ)と一緒だったら絶対晴れるのにねー。おかしい」 別な仲間からもラインが入った。 ちょっと苦笑。 私は晴れ女って呼ばれている。今まで運動会も遠足も旅行も、ピカピカの快晴。私のアルバムには太陽の下で満面の笑みを浮かべている写真ばかりが並んでいる。 なのに今日はどうしたんだろう。 朝ご飯を作ろうと卵を割ると黄身が崩れてしまった。目玉焼きが台無し。目玉焼きは英語で「sunny-side up」 というんだっけ。ああ、今のお天気みたいにぐちゃぐちゃだ。 だんだんと頭痛がしてきた。雨は苦手。こんな日に家にこもっていたら余計に気が滅入る。 私は当てもなく部屋を出た。傘は黄色。小学生みたいだけど、ここだけは太陽みたいで気に入っている。 どこに行こうか。友達を誘ってカラオケ? それもいいけど、もうちょっと歩いてみよう。 私は、映画館を見つけた。日頃は足を止めたこともない小さな映画館だった。上映されているのも昔の映画ばかり。こんなことで採算が取れるのかしら、と思っていたのだ。 「入ってみようか」 上映されていたのは「シェルブールの雨傘」だった。タイトルを聞いたことはあった。 冒頭、色とりどりの雨傘が画面を彩る。 きれい。憂鬱な雨も、雲の上から見たらこんなに鮮やかなんだろうか。 などと思いながらも、不覚にも眠ってしまった。快い音楽だけが耳に残った。
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