晴れ女

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晴れ女

「日向子ちゃん、最近元気なくない?」 「あ、そう見えます?」 同僚の飯田君が声をかけてくれた。パソコンにデータを打ち込みながらため息をついていたのを聞かれてしまったようだ。 「うん。めずらしい、ていうか初めて見たよ。日向子ちゃんがため息つくの。彼氏とうまくいってないの?」 「そう言うわけじゃないんだけど、デートの時に絶対雨が降るから、調子が出ないの」 「へーえ。そんなことある?」 飯田君とはいい遊び友達だ。アウトドア好きな彼とは、大勢でキャンプに行って騒ぐのが楽しい。もちろん、雨に降られたことなど一度もない。だから、キャンプの時には必ず誘ってくれる。 「それがさ、あるのよ。しかもずーっと。平日も休日も関係なし。もはや異常よ。あたしの周りだけ梅雨になったみたい」 「ははは。そりゃ面白い。日向子ちゃん、梅雨でもお出かけの時には晴れる女なのにな」 「でしょ。そりゃため息も出ますよ。いっしょにお天気ドライブしたいのに」 「そっか。ストレスたまってそうだね」 「うん。たまってる」 「じゃあさ。今度の週末、BBQしない? 俺の知り合いがキャンプ場やってて、キャンプ場開きする前に仲間内で遊ぼうって言ってくれてる。俺が車出すからさ。彼氏も連れてきなよ。」 「いいの?」 「うん」 「ありがとう!」 しかし雨宮さんにこの話をすると、断られてしまった。 「僕が行くと、雨になるから」 「何言ってんの。週末の天気予報は晴れだよ」 「でも、僕が行くと雨になるんだ。だから、日向子さんだけ言っておいで」 「え?」 「たまにはお友達と遊んでおいでよ。土産話でも聞かせて」 雨宮さんは優しい笑顔で言ってくれた。行くべきではないシチュエーションなんだと思う。でも私の頭の中は、青空の下でBBQをする楽しさでいっぱいになってしまった。
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