晴れ女

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BBQ当日は雲一つない青空だった。私は太陽の下で思いっきり深呼吸した。飯田君の知り合いがやっているキャンプ場は小さな湖の周りにあって、木々の隙間からキラキラした湖面の乱反射が見えた。 「たーのしー!!」 久しぶりに会う遊び友達も、みんな笑顔だ。車を出してくれた飯田君以外はみんな強かに酒を飲み、飯田君のハイエースは次々に酔っぱらった人たちが運び込まれて戦場のトラックみたいになってしまった。 「後片付けしてるの、あたしと飯田君だけだね」 「日向子ちゃん酒強いなあ。だいぶ飲んでたみたいだけど」 「あれくらいじゃ酔っぱらいませんよ。飯田君こそ、飲めなくて楽しくなかったんじゃない?」 「俺はもともと弱いから。いつもこういう役回りだよ」 「いい人だもんね」 「ありがと。日向子ちゃんからほめられると嬉しいよ」 湖の乱反射は夕焼けの赤みが混じっていて、飯田君の笑顔が柔らかく包まれた。 飯田君が全員を家に送り届ける間、私はずっと助手席に座っていた。その間私は雨宮さんのことを思い出すこともなかった。私たちはそのまま飯田君のアパートに行き、抱き合った。飯田君の唇は熱く、今日の太陽のようだった。  
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