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そのたくさんの方々からいただいた香典は、すなわち祖父が父が、延々と続けてきた親戚づきあい、お祝や香典などがやりとりされてきたからこそのものなのに、長男であるが故に続けてきたものなのに。祖父母が叔父達に何一つ教えずにきたから、長男として生まれた父である兄が儲かるどころか損をすることが多いことに気づけないのだ。
家があって、田畑や山(財産)もあって、親の助けもあって……、ズルい。自分は知らないところで働いて家族をもって、家を建てて……、苦労した。多分父の弟達は大小はあっても皆そう思っていたに違いない。それが葬儀後のあの言葉になったのかもしれない。
父からすれば、今や「負動産」と呼ばれる祖父から受け継いだものなど欲しいとは思ったことなどないに違いない。
父の口から何度か聞いた「こんなとこ、俺も出られるなら出たかった」という言葉。商店街のある町の中心部まで約3㎞、車があった時はまだよかったが、目が悪くなり運転免許を返納してからはより不便な道のりとなった。
晩年は過疎化が進み、その商店街もさびれ、スーパーがなくなり、隣市まで行かないとほとんどのものが手に入らなくなった。車を持たない人が住むには不便極まりない場所となったが、歳を重ねすぎ「今更どこにも行けない」のが現実でもあった。弟達が羨ましかったことだろう。
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