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昨夜、父の通夜を終えて夫の実家に戻っていた私は葬儀の日の朝、洗濯を終え、洗いものをしていた。
義父母の毎日は夫の妹が日に2回通ってくれて、なんとか成り立っている状態で義妹がいなければすぐにでも破綻してしまう。最近は朝も別々にとっているらしく、義父はまだマッサージチェアの上だった。
「7時半か。ご飯にするかな」
その義父の言葉が、義父母のお昼用の料理をIHヒーターでしつつ、茶碗を洗っている私の耳にも届いた。それで私もスマホで時間を確認した。
それからしばらくして居間の柱時計の鳴る音が……。
「ボーン、ボーン、ボーン、ボーン、……」
え? そんなに経っていないはず。慌てて居間に行き時計を見た。7時41分。何故鳴る?
「お義父さん」
私は義父と顔を見合わせた。夫と嫁が掛け時計を見上げている姿に義母は不思議そうな顔をしている。耳が遠く、結構大きな音でないと聞こえない。時計の音も聞こえなかったのだろう。
「昭和42年製だからな、俺と同じで歳とってるからなあ」
「何回鳴りましたか?」
「数えてなかったからわからんが、5、6回は鳴ったように思うがな」
「ゼンマイですから、次の8時は休みますね。きっと」
「さあ、どうだろう」
私の予想は外れ、8時にはちゃんと8回鳴ったのだった。
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