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「実家のおとうさんが俺に挨拶しに来てくれたのかもな」 「そうですね。お義父さんが出席できないから、きっと」  夫の父もガンが再発していて余命を言い渡されている。無理をされては困る。葬儀には通夜に続き、義妹(いもうと)が義父に代わって出席してくれることになっていた。  実家の両親は10年以上義父の仕事関係の人達に混ざって1年に1回一緒に旅行に出かけていた。高齢になった義父が工務店を閉める少し前までのことだったが、その後も時々どちらかの家でお茶を飲み、話をすることがあったらしい。私達夫婦が知らないところでお互いを気遣いながらつきあっていたのである。  4人とも80を超え、会うことも少なくなって、母の葬儀は感染症まん延の真っ只中で、家族葬にしたため会わずじまい、そのまま父とも会うことなく別れとなったことに義父は何を思ったかはわからない。  葬儀の朝といえば、母の時は骸骨雲が流れていった。でもそれは一人で見たもので、私にそう見え、母だと思っただけだった。四十九日の納骨の時には風がないのに笹の葉が大量に私達に降り注いだ。そのどちらも自然現象である。  時計を鳴らしたのが父だという確信はないけれど、父だとしたら、母の上をいく自然現象ではないボーンボーンボーン、ちょっと褒めてあげたい気がする。「やるじゃん」と。近くに住む歩行器か車椅子でないと移動ができなくなった伯母にも会いに行ったかもしれない。四十九日にちょっとだけ期待をしている私だった。
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