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 母の愚痴によく出てきた話で一番古いものといえば、私が小学校に入った年のものである。担任の家庭訪問が納屋で行われたことで私の記憶にも残っている。家が建て替え中だったためだ。祖父が設計した(大工が修正はしているだろうけれど)新しい家は、元の家の材木を使えるものは使うという約束で建てられたのだという。大工に太い柱などいいものはくすねられたらしいが、そういういい加減な時代でもあった。 「あの頃は物価が高くて給料で食べていくだけでも大変だったのに、家を建てる、結婚式をする、っておじいちゃんが。どこにお金があるの?だったのよ。なのにね、(マモル)さんたら貯金がなくて、結婚指輪もうちが用意したのよ。あんまりでしょ。ホントよくやったと思うわ」  自分達が費用を出すわけでもないのに「家を建てるぞ」と言った祖父。そして同じ年の秋、父の弟である叔父さんの「結婚式を家でするぞ」と。叔父さんは都会に出ていたが、独身だったので田舎で見合いをさせ、結婚式をしてやる、ということだったようだ。  その時の指輪代を叔父は返さなかったらしく、母にとってはとにかく面白くない出来事の一つである。そして、中学生になっていた私や高学年だった妹も父の弟夫婦をよく思えなかった、記憶に残るお金の話。
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