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稲光が空を走る。叩きつける雨で、外は見えない。ゴンドラは随分高いところまで上り、今なら天に手が届くような気さえする。
ナナ。
私は骨壷の蓋を開けた。白い灰に隠れるようにして、小さな小さな骨が埋まっている。そっと摘んで取り出した。
ナナ、ごめん。
ぎゅっと小さな骨を握りしめた。どこの骨かもわからない、小さくて冷たい骨。
ナナ。
私は骨に口付けた。骨は冷たく、生きていたナナのように温かくはない。それでも私の熱が伝わるように、あの日のように私は骨にキスをする。
ナナ。私はあなたを……いや、あなたと、幸せになる道を進みたかった。
骨は冷たく、ただそこに私の熱が微かに残るだけだった。
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