4

1/1
8人が本棚に入れています
本棚に追加
/8ページ

4

 稲光が空を走る。叩きつける雨で、外は見えない。ゴンドラは随分高いところまで上り、今なら天に手が届くような気さえする。  ナナ。  私は骨壷の蓋を開けた。白い灰に隠れるようにして、小さな小さな骨が埋まっている。そっと摘んで取り出した。  ナナ、ごめん。  ぎゅっと小さな骨を握りしめた。どこの骨かもわからない、小さくて冷たい骨。    ナナ。    私は骨に口付けた。骨は冷たく、生きていたナナのように温かくはない。それでも私の熱が伝わるように、あの日のように私は骨にキスをする。  ナナ。私はあなたを……いや、あなたと、幸せになる道を進みたかった。  骨は冷たく、ただそこに私の熱が微かに残るだけだった。
/8ページ

最初のコメントを投稿しよう!