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ナナは数日前、事故で死んだ。元彼の車に乗って事故に遭ったのだ。彼は酒を飲んで運転した挙句、道路から大きく外れて電柱に思い切りぶつかった。ぶつかる寸前にハンドルを反対側に切ったのか、彼は助かった。ナナの乗っていた助手席は、電柱にぶつかってぐしゃぐしゃになっていた。そのせいでナナは即死だったらしい。
元彼はナナをサンドバッグのように殴る男だった。どうしてナナがそんな男について行ったのか、もう知ることもできない。
ゆるさない。私はリュックをもう一度抱きしめる。リュックの中で小さく、骨壷がことりと音を立てる。
ようやくチケットを購入し、汗を拭きつつ園内に入った。
手荷物検査で何か言われないかとヒヤヒヤしたが、係員はちらりとリュックの中を一瞥しただけで
「ハァイ大丈夫です、それではお楽しみください!」
と私に笑顔を向けた。引き攣った笑顔を返してそそくさとその場を去り、どこか座れる場所はないかと辺りを見渡す。が、数少ないベンチは子供連れの家族や仲睦まじいカップルに占領されていた。仕方なく土産店の軒先の日陰に座り込む。自動ドアが開く度に流れ出てくる店内の冷気が涼しい。
暑いし、人は多いし、何が楽しいのかわからない。けれどナナは、しきりに「遊園地に行きたい」と言っていたものだった。
――でも、骨になってから来たってもう遅い。
リュックを前に抱き、立ち上がる。
メリーゴーランドって可愛いよね、可愛い馬がくるくる回ってさ。
ナナの言葉を思い出し、よろめく足に力を入れてメリーゴーランドの方へ歩き出した。
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