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あの日以来、ナナは何故か私と共に行動するようになった。
「マコといれば『普通』がわかる気がするから」
そんなことを言いながら、いつも私の後を子犬のようについて回っていた。
「遊園地に行きたいなあ」
学校で彼女の課題を見ていると、ナナがぽつりとそう漏らした。遠い昔に母親と行ったらしい。
「暑い夏の日だったなあ。その日だけはママも殴らなくてね、アイスとか買ってくれて。メリーゴーランドに乗って、コーヒーカップに乗って、お化け屋敷でぎゃーぎゃー泣いて、観覧車に乗って……楽しかったな」
ナナはぐりぐりと鉛筆でノートに観覧車の絵を描く。子供みたいな絵で、丸も直線もどこかぐにゃぐにゃして不安定だった。
「いつか行こう、今度は私とさ」
そう言うとナナは満面の笑みで頷いた。たのしみ、と呟いて下手くそな遊園地の絵を描き始める。「まずは課題でしょ」
と私は彼女の頭を軽く叩いた。はあい、と舌を出して教科書を広げる。
課題なんかより、早く遊園地に連れて行ってあげればよかった。今更もう遅いけれど。
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