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夏は嫌いだ。夏だからとはしゃいで集まる人も嫌いだ。だから、夏休みにどっと人が増えて、暑い屋外にある遊園地なんて、大嫌いだ。
それなのに、私は今一人で遊園地に来ている。遊園地という楽しげなものと、おそらく対極にあるようなものを抱えて。
周りは家族連れやカップルばかり。一人で来ている人なんて、私以外に見当たらない。あまりにも場違いだ。
照りつける日差しからリュックの中のものを守るように、そして自分の体積を小さくするかのように、背中を丸めてリュックをしっかりと抱きかかえる。
リュックはずしりと重く、やはりそれは持ってくるべきではなかったのかもしれない、と微かに思った。慌てて首を振り、考えを頭の外に追いやる。
ナナ、ここに来たかったんでしょう?
私はリュックの中のそれに、小声で話しかけた。もちろん返事はない。当たり前だ。
だって私が持ち歩いているのは、数日前に死んだ親友の遺骨なのだから。
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