チャラ男式・二河白道

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 俺の前にあるのは、狭くて()っそい道。左側にはお客さんの酷評と炎上するSNSの激しい炎。もう火の海。右側にはスキャンダルな誘惑とか売れない仲間同士でダラダラしたいとか、そんな泥水の河。むしろ汚水。  俺は足がすくんで、何回も進むのを諦めそうになる。でもそこで! 向こうの方で美しく微笑む女性の姿が目に入る。その人が「大丈夫」って優しく言ってくれて、俺はもう一度この険しい道を歩いていける。いや、その人がいれば猛ダッシュからの大ジャンプで、スターにだってなれる――。 「俺にとって小坂さんはそういう人だから……という訳で、付き合ってください!」  うーん、と私は微妙な反応をしてしまった。だって、ね? 「うう、これで十二連敗か。そろそろ心折れそう」  大演説をかました男性、丸山悟流(さとる)は、向かいの席でわざとらしくうな垂れた。そこへ、空気を読んでいたカフェの店員さんが、そっと、注文したケーキを置いていく。公共の場でこんなことをやられて、私の方が心が折れそうだ。 「丸山くんは、メンタル強いから大丈夫じゃないかな……」 「悲しいのに、いろはさんに褒められて嬉しい……」  唐突な名前呼び。少し熱かった頬がもう少し熱くなった。  
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