あらすじ

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ぽつんと現れた分かれ道 看板もなければ 地図もない 右だよ!右!! 左だって!絶対左!! 言い争う二人 なんてことない 些細な喧嘩 もういいよ! そう言うと 一人は右へ 一人は左へ お互いに譲れなくなって 引っ込みがつかなくなって そっぽを向いたまま 別々の道を進む 歩きはじめのペースは早い 自分が正しいと思うから でも 段々と足が重くなっていく 気づけば目線も下がっている 先に進むのが怖い 振り向くのも怖い 次第には足が止まってきて 木の下で思わず座り込む 向こうがこちらへやってくるはずがない だって 別々の道を選んでしまったから すでに歩いてしまった道のりには 自分の足跡が確かについていて 戻ろうと考えはするものの その腰が上がることはない その足が動くことはない どうしよう どうしようもない わからない もうわけがわからない 涙を流し 吐き出す言葉も無くなった時 声が聞こえた …戻ってみたら? 誰からなのかはわからない どこからなのかもわからない でも あたたかい 戻ったって どうせいないかもしれない 戻った頃には 日が暮れているかもしれない 余計に虚しくなったり 後悔だってするかもしれない それでも そのたった一言が 雲間から差し込んだ 一筋の光のような気がして 掴むことの出来ないそれを 絶対に離すことのないように わざと自分の足跡を消すように 新しい一歩を上書きしていく 右足 左足 また 右足 前 時々 足元 目線は真っ直ぐじゃなければ 足も疲労でおぼつかない それでも ただひたすらに 歩みだけは止めないように … ……… いた 信じていたとか 確信があったとかではない ふと見上げた視線の先に うつむく君を見つけた 私の姿を見るなり さらに下を向く君 さっきまで大きかった歩幅が 近づくごとに小さくなる 一歩また一歩 君が大きくなる度に 空を撫でる太陽は沈んでいく 君の影が 私のつま先に触れた時 私は君の顔を見る 私の息遣いが 君の前髪を揺らした時 君は私の顔を見る 世界が光を無くしても 涙の跡だけはまだ輝いている …そうだ そうなんだ 別に どちらの道が正しいとか そんなことが大事なんじゃなくて 二人で選んだ道が 手を取り合って 笑って歩いた道こそが 十年先か二十年先かはわからない そんないつかの私に これが正しい道であったと 雨風でぐちゃぐちゃになった足跡が 綺麗に見えるくらい この道で良かったのだと そう 教えてくれるんだと ……… 一旦 休憩しよっか そう言う私に そうだねと言う君が 腫れぼったい目を細くする 立ち止まったり 遠回りしたっていい ただ 歩いてきた道のりに しっかりと足跡さえ残していれば 気づいた時には その道のゴールに着いている どんなに辛くても どんなにうまくいかなくても 生きている限り その道は誰かの幸せに続いている 私も君もあなたも 全ての道が 一つの大きな幸せに 繋がっていますように
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