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吉祥本家の屋敷で僕の5歳の誕生日会が開かれる前々日、招かれた一門の者達が続々と本家に集っていた。
一週間ほど前に本家入りしていた5歳年上の疾風の兄、風雅と疾風の双子の妹、美月は集まった一門の子供たちに混ざり恒例の吉祥家専用ゲームを楽しんでいた。
突然、美月が「お家に帰る」とぐずり出した。
疾風達の両親は吉祥家が手掛ける『里山プロジェクト』の管理者として里山に居を構えていたから直ぐに帰れる距離ではない。
風雅と疾風が美月をなだめはするが、どうも様子がいつもと違う。
子供のぐずりと言うには美月の表情は鬼気迫るものがあった。
母が美月の只ならぬ様子に、急遽里山へ向かことになった。
その夜、屋敷の中が騒がしく僕は夜中に目を覚ました。
階段の踊り場に出てみると外出着に着替えた風雅と執事を疾風が追いかけ玄関広間で呼び止めていた。
風雅と僕の父に残る様に窘められているが疾風は頑として譲らない。
風雅が美月の傍にいてくれと頼んでも自分も行くと引く様子が見られない。
こんな疾風もこの時初めて目にした。
子供と思えない程、周りをよく観察して聞き分けが良すぎると父はいつも言っていた。
褒めると言うより将来を憂いている様子で。
見かねた父が一言「連れて行きなさい」と執事に告げると3人は慌てた様子で出かけていった。
この時に例えようもない胸騒ぎを覚えた事を今でも鮮明に記憶している。
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