従兄弟の背中

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僕の誕生日会が終わった夜、風雅と疾風は疲れ切った様子で屋敷に戻ってきた。 母が戻ったのはその2日後、父に抱えられ心ここに非ずの状態だった。 出迎えた僕には一切目もくれず、母は疾風と美月を見るなり涙ながらに抱きしめた。 僕の胸に痛みが走った最初の出来事だった。 疾風達の両親は里山で起きた自然災害に巻き込まれ命を落とした。 それから風雅、疾風と美月は吉祥本家に移り住み、僕らは兄弟の様に育った。 僕に兄弟姉妹はいなかったから従兄弟と始終一緒にいられる事に初めの頃は嬉しくて仕方がなかった。 だが、吉祥本家に生まれた僕と吉祥分家の筆頭に生まれた疾風は一門から比較対象の恰好の餌食だった。 何をやらせても卒なくこなす疾風と努力に努力を重ねても結果が疾風に及ばない僕。 いつしか僕の中で疾風を追い越す事が目標となった。 僕の父である吉祥本家の当主は僕らに分け隔てなく接した。 当主として必要な教育、教養、人心掌握術、一門との関わり方等、全ての機会を平等に与えた。 母は父が与えた機会の評価を公平に下した。 成果を出せた者には賞賛を、出せなかった者には励ましの言葉を一片の偏りもなく公平に。
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