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母は疾風を「吉祥本家の当主の器だ」と賞賛し、ことあるごとに疾風の能力の高さを一門に知らしめるようになっていった。
嫡流の僕を、現当主の息子である僕を差し置いて、母は疾風を「次期当主」に据えようと考えているようだった。
僕は血眼になって努力した。
睡眠時間も食事の時間も削って勉強した。
ピアノや管楽器、弦楽器等の音楽、ダンスに絵画、語学に護身術と言った教養を深める習い事も必要以上に挑戦した。
僕は必死だった。
だが、必死になればなるほど疾風は僕の遥か先を走っていく。
学年トップの座も一度たりとも譲ってはくれなかった。
追いかけても、追いかけても差はどんどん広がっていく。
何か一つでも疾風を追い越せる事ができたら母は僕を「次期当主」と認めてくれるかもしれない。
母の賞賛を一身に受けたい。
僕の目標はいつしか母からの賞賛を、母からの愛情を手に入れたい思いに変わっていった。
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