従兄弟の背中

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だが、そんな楽しさは長くは続かなかった。 同じくイギリスの大学に留学していた疾風の兄、風雅が寮に突然訪ねてきた。 これから日本に一時帰国するから僕を迎えに来たと言うのだ。 状況が掴めなかった。 風雅に説明を求めると驚いた顔と怪訝な顔が混ざった表情をされた。 「叔母様から何も聞かされていないのか?」 少し責める様な口調で風雅は僕を問い詰めた。 「何もって何?」 「涼・・・・お前、本家と日本の状況を逐次捉えていたか?」 留学してからあっという間に二年が過ぎていた。 二年の間、クリスマスやイースターの長期休暇は友人達と旅行やボランティアに勤しみ日本には戻らなかった。 僕は定時の状況連絡のみに留めた。 定期的に送られてくる疾風と美月からの手紙やメールにも「元気で楽しくやっている」とだけ返信した。 彼らからの内容はほとんど読まずに。 父から時折届くメールには状況報告の他、日常の事、旅行やボランティアの中から得た学びから将来展開したい事業のアイデアを詳細に記した。 ただ、日本の様子や吉祥一門のことはあえて知ろうとしなかった。 風雅は呆れた顔を向けた後、神妙な面持ちになった。 「叔父様が、当主が亡くなられた」 言葉の意味が理解できなかった。
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