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「叔父様って?当主って一門のどこの当主?」
僕の返答にいつも穏やかな風雅が大声を上げた。
「吉祥本家の当主だっ!お前の父親だっ!」
父とは三日前にメールでやり取りしたばかりだ。
僕の事業アイデアをプロジェクト化してみてはどうかと企画書を作るように言われた。
僕は嬉しく、即答して二週間の期限をもらい企画書に着手した所だった。
僕は父との最後のメールを頭の中で反芻した。
『周りが何と言おうが、一門の評価がどうだろうが、お前は吉祥家の嫡流で私の唯一の息子だ。次期当主になるべく努力を惜しまないお前を誇らしく思っている。今のままでいいんだ。愛しているよ』
呆然と佇む僕に風雅は「帰るぞ」と一言告げると寮の管理人室で外出の手続きを済ませた。
日本に向かう飛行機の中で風雅から父が病を患っていたことを知った。
僕が留学して直ぐに心臓に狭窄部位が見つかったそうだ。
発見したタイミングで手術をしたから日常生活にはさして支障はない様だった。
だが、吉祥家一門64家門の当主としての立場は多大なストレスがかかる。
「叔父様は涼、お前の事を何より気にされていた。俺に様子を知らせてくれと頭を下げられて・・・・」
風雅はスマホのアルバムを開いて僕に手渡した。
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