小鬼少女

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小鬼少女

「鬼だよ。小鬼。俺よりは小さかった。泥だらけのブラウスとスカートを着て、見た目は女の子みたいだ。髪がぼさぼさで泥だらけの顔だった。だけど力は強くて、俺をつかんでグイグイ引っ張るんだ。で、池の真ん中あたりの泥水に引きずり込もうとするんだ。俺はもう必死で暴れたよ。なんとか小鬼を振りほどいて逃げ隠れていたところさ。お前は何でここに?」 「だって、三ちゃん急に消えちゃったんだもん。だから三ちゃんのやった通りに、祠の右側から振り向いたらここに来られたの」 「そっか。とりあえず池の端っこに行ってみよう。そこから降りたらここから出られるかも」 「そうだね。三つ辻地蔵の祠の後ろがここともとの世界との出入り口かもしれない」  三平は立ち上がった。 「行くぞ」  三平が、池の縁を見ながら秀子の手を握ろうとするが、空を切るばかりだ。振り向くと秀子がいない。 「秀子! どこだ」  ふとみると草を踏んだ後がある。 「あいつが秀子を担いで行ったんだ」  一度池の縁まで行ってうまくここを出られたら、大人を呼んできて秀子を助けることができるかも。でも、その前に、あの泥水に引き込まれたら……。助けにもどるか。でもあの小鬼の顔……。泥だらけで怒っているような泣いているような顔。思いだして足がすくむ三平だった。
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