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2人の反省
三平と秀子の顔が、泥水に没しようとした時だった。
「これ! いい加減にしなさい」
三平の聞いたことのない声とともに小鬼の頭に錫杖が打ち下ろされるのが見えた。
「いて!」
小鬼は、2人の頭から手を放し、自分の頭を押さえる。2人は、せき込みながらも新鮮な空気を吸った。
「つかまりなさい」
2人の前に手が差しのべられた。その手にすがる2人。顔を上げるとそこにいたのは、三つ辻地蔵だった。赤いよだれかけで分かった。三つ辻地蔵は、水面に立って、三平と秀子を引き上げ、陸地におろした。
「お地蔵様……。ありがとうございますぅ」
秀子は、泣きながら自分より小さい三つ辻地蔵にすがっている。
「お地蔵様。ごめんなさい。俺……。しちゃいけないと言われたことをしてしまいました」
三平も涙を流して三つ辻地蔵の前に座って言った。
「あなたたち、よくお聞きなさい。なんでこんな言い伝えができたかわかりますか。それは、この池で昔一人子どもが溺れ死んだからなのです。なあ、菊子よ」
三つ辻地蔵は、小鬼の少女に顔を向けた。小鬼の菊子は、頭をさすりながら座って話を聞いていた。
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