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月曜日
《月曜日》
途中スーパーに寄って買い出しして、帰宅した洋平は、一週間分の食材を、台所で手早く調理する。
挽肉とみじん切りの玉ねぎを炒めて、作り置きのタネにする。一食分ずつ小分けにし冷蔵庫へしまい、夕食用のタネを一人分、カレー粉をまぶして、底の深いフライパンでキーマカレーにする。
「えー俺のは?」
園谷が調理の様子を見て、不服そうに言う。
「三日間も居座る人間を客とは思っていないんで、ご飯くらい自分で用意してください」
「ケチくさいこと言うなよー、一人分も二人分も変わらないじゃない。作ってよ」
「無理です」
「イヤだ、作って。作ってくれるまで、この部屋から動かないからな」
「わかりました。食べたら出て行ってくださいね」
もう一度、一人分を調整して、園谷の前の、テーブルに平皿を置いた。
一分も経たず完食した園谷に呆れる。せっかく作ったのに、噛みもせず、丸吞みで流し込まれていくのを見ていると、虚無になりそうだ。
食べ終わった園谷は、当然のように煙草を吸い、灰皿代りにカレーが盛られていた皿に、煙草の火を押しつけて消した。
その行動に、園谷の想像力のなさと、作ってくれた人への敬意のなさがよく表れていて、わかってはいたが失望した。
煙草の吸殻で汚れた皿を、シンクに片付けもせずに、園谷は立ち上がる。
「加苗くん、酒を買ってきてあげようか」
洋平の反応が薄いとみるや、園谷が手のひらを洋平の前に出して
「カネ」
と要求した。
「カネを無心してくるなら、酒なんていりませんよ。先輩の親じゃないんで一円も出したくありません。そういう笑いはつまらないし、迷惑です」
「加苗くんへの配慮じゃないの、それくらいわかってよ」
「配慮? いま配慮って言いました? ちゃんと意味知ってます?」
園谷への苛立ちが洋平の語調をきつくした。
「食べたんだから、ここから出て行ってください」
洋平の声を無視した園谷が、ベッドに潜り込んでしまった。
テーブルに置かれたままの皿を、苦々しい気持ちで見つめ、洋平は吐き捨てる。
「厚かましいにもほどがある」
一秒も園谷と同じ空間の酸素を、吸いたくなくて、ツキの部屋で寝ることにした。
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