火曜日

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火曜日

《火曜日》  めずらしく園谷が朝、起きていた。  もう口もききたくないので、園谷はいないものとして、洋平が出勤の支度をしていると 「加苗くん、なに怒ってんの? ねぇ、ちょっと話があるんだけど、聞いて」 「なんですか。まず昨夜のことを謝るなら聞きます」  園谷がしおらしく「ごめん」と頭を下げた。 「で、話なんだけど。中学時代の仲間でさ、梨岡くんていたじゃない、覚えてる?」  頷いた洋平を見て園谷が続ける。 「実は俺、梨岡くんに三万円貸してて、戻ってきてないだよね。それで加苗くんが、その三万を俺に返して、加苗くんが梨岡くから取り立ててよ」 「は?」  さもいい提案をしているふうであるが、園谷しか得がない。この話が噓なら、洋平は三万の損だし、本当だったとしても、園谷に返ってこない三万を、梨岡が洋平に返すわけがない。 「は?」 二度目の聞き返しに園谷は、理解力がないと思ったらしく同じことを言う。 「だから、加苗くんが俺に三万を」 「言ってることはわかっているので繰り返さなくていいです。債権譲渡ですか」 「そう、勘がいいやつは話が早くて助かるわ」 「何を言ってるんですか。本当に意味がわからない。梨岡さんとは当時も今も親しくないので、取り立てなんて無理です。お断りします。この話は二度としないでください」  バッサリ会話を打ち切って、出勤した。  苛立ちで頭痛してきた。
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