4.シロが消えない方法はひとつだけ

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この頃にはもう、シロに対して思っていた感情は恋愛感情なんだと自覚していた。会えない時間もシロのことを思い、会えなくなることにあんなに恐怖を抱いてシロに寂しい想いをさせたくないと強く思っていた自分。シロを見るたびにドキドキする鼓動も全て。 お狐様に恋愛だなんてと思ったたけど、お狐様じゃなくて俺はシロに惹かれたんだ。 「あーあ、のぞみ兄ちゃんいっちゃったな」 ため息をつきながらリビングに戻るつばめ。 「寂しくなったなあ、俺が遊んでやろっか」 そういうと、つばめは振り返って遊ばないよ! と言ってきた。そしてそうだ、と付け加える。 「のぞみ兄ちゃんに卵の回収と水やり、そろそろお前がやれって言われたんだ。代わってやるよ」 つばめはふくれっつらしながらそう言った。俺は驚きながらも兄貴の提案に感謝した。それなら夏休みがすんでもシロと話できる時間がある! 「おっ。ありがとうな、つばめ」 「のぞみ兄ちゃんに言われたからだからな」 ふんっと前を向きそのままリビングに入っていった。そのあと兄貴から聞いたんだけど、つばめは『そろそろかわったほうがいいのかなあ』と兄貴に相談していたらしい。全く素直じゃない弟なんだから。 その後のシロと俺は当然、前途多難の道のり。お狐様と人間の恋愛なんだから当たり前なんだけど。例えば俺が誕生日を迎えてもシロはそのままだ。ずっとあの風貌のまま。それは俺が必ず先にいなくなるということ。それに気づいた時、目の前は真っ暗で、世界はどん底だったけど、どうにか乗り越えられた。 その方法は……それはご想像にお任せするよ。ヒントは俺とシロが一つになること、かな。 お酒が飲めるようになったとき、俺らは結ばれたんだ。 相変わらず神社は家の隣にあって、代々の油揚げのお供えは欠かさない。いまも鶏の鳴き声は聞こえ、朝を迎える。大銀杏は相変わらず秋には銀杏の絨毯ができあがる。 「シロー」 今朝もシロは笑顔を見せてくれた。俺の隣で。 「みずほ、おはよう」 【了】
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