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3.子供の時っていつまで?
「声がでかいよ、みずほ。いいだろ、先輩が貸してくれたんだ。これから鑑賞会するんだせ」
健二郎がそう言うと、隣の豊は俺の様子を見ながら言う。
「みずほも一緒に見る?」
「いや、俺は買い物があるからっ」
慌ててそう答えると二人はさらに笑う。
「みずほちゃんにはまだ早かったかなー!じゃな、見たくなったらいつでも言えよ」
DVDをスポーツバックにしまうと二人は手を振りながら言ってしまった。
俺はこの年代にしてはそう言ったことに対する興味が少ないみたい。全くないわけではないけれど……。だからさっきみたいに過剰に反応してしまうのだ。俺は持っていた鶏肉を乱暴にカゴに入れ、他のものを探し始めた。
今日の夕飯はチキン南蛮。俺とつばめの大好物だ。うまいうまいと食べているうちにお腹がいっぱいになり、苦しくなった。縁側でごろりと仰向けになって、夏の空をボーっと見る。いつもの星空。夕立があったからいつもより涼しい。
ふとシロのことを思い出した。神様はご飯は、食べないのだろうか。いつも一人なのか。もう何百年も? すこし寂しい思考になったので俺は頭を振る。キラキラ光る星空を、シロも見ているだろうか。
「大丈夫かあ?」
隣に兄貴が座り、麦茶を入れたコップを置いてくれた。
「サンキュー。大丈夫だよ。母さんのチキン南蛮、美味過ぎていつも食べ過ぎちゃう」
「わかるわかる。今のうちに沢山食べとけよ。あれ以上のチキン南蛮に俺はまだ出会って無いからな」
体を起こし、麦茶を口にするとキンキンに冷えていて美味しい。二人でぼんやりと空を眺めているうちに、ふと兄貴に聞きたくなった。
「兄貴、お狐様の背中見たって言ってたよな?」
「おお。何だまだ疑ってんの。あーでも俺はもう見れないな」
「へ? 何で」
「子供の時にしか見えないんだよ。お前は……どうかなあ」
それを聞いてびっくりした。えっ、俺見えてるんだけど。
「いつまでが子供なんだよ、どうやって線引きするの」
「どうやって……って、そりゃアレよ」
「なに?」
「どしたのお前、やけに聞くね」
「お狐様に会ったんだよ」
「はあ? まじか。ってことは……そかそか」
兄貴はポンと肩を叩いた。そしてその先の話ははぐらかされて、今度オススメのものを持ってきてやるからなとよく分からないことを言っていた。
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