生者必滅・会者定離

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 そんなある日,溜まり場のすぐ近くの路上で客引きをしている麗華が高級車に乗った外国人たちに無理矢理連れて行かれそうになっているのを仲間たちが見つけた。  最初に気づいた秀行が飛び跳ねるように走り出し,嫌がる麗華の腕を掴む男に獣のような唸り声をあげながら向かって行った。 「なんだ,お前ら!? ふざけんじゃねぇぞ! 麗華を離せ!」  たむろする男たちも目の前で連れ去られそうになっている麗華を助けようと次々と駆けつけた瞬間,最初に駆けつけた秀行の顔面を大柄な男が力任せに殴りつけた。  ゴン!  鈍い音とともに空中で身体が反り返り,一発で意識が飛び,鼻が折れ,殴られたほうの耳が聞こえ難くなった。  頭から路上に叩きつけられるようにして倒れると,男が秀行の足首を勢いよく踏み付けて聞いたことがない音がするまで磨き込まれた革靴の踵に力を込めた。  グアァァァァァァァァ!!!  秀行の悲鳴が響き渡るなか,仲間たちも同じように殴られ,踏みつけられると身体中の骨を砕かれ,悲鳴をあげた。  少年たちが路上に倒れて泣き叫ぶなか,麗華は車に押し込められて無理矢理どこかへ連れて行かれるのを秀行は歯を喰いしばりながら見ているしかなかった。  タイヤを鳴らして走り去る車が視界から消えると,路上には意識を失って倒れている少年たちと,辛うじて意識はあるが手足の骨を折られて痛みに耐えながら泣いている少年たちが残された。 「くそっ……麗華……」  それから数日間,秀行をはじめ外国人たちに殴られた子どもたちは何もできないまま溜まり場で病院に行くこともできず,小さくなって折れた骨を庇うようにして痛みがひくのをただ耐えるしかなかった。  なかには親に連絡をとり病院に運ばれていった者もいたが,その後この溜まり場に戻ってくる者はいなかった。  麗華が拐われて以来,麗華をはじめ何人かの子どもたちは溜まり場から消えて二度と戻って来なかった。  秀行が記憶を頼りに車のナンバーを調べても,どんなに探しまわっても,一緒に掃溜めのようなこの場所から逃げようと語り合った麗華がどこに連れて行かれたのか,そしてあの外国人たちが何者なのかはわからなかった。 「麗華……絶対に見つけ出してやるからな……」
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