雨降る森の静かな隣人

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 目を覚ますとアイツはいなかった。  オレは身体を伸ばして、窓の外を見る。  雨はまだ降っていた。  朝になったのに、曇天と鬱蒼とした木々のせいで、辺りはまだ暗い。  扉は、しっかり閉じられている。  外に出ることは難しいだろう。  オレは暇だった。  昨日と同様に、メシは置いてあったので勝手に食べたが、それが終わるとやる事なんて何もなかった。  狭い家だから探検したとて、すぐに終わる。  鼠でもいてくれたら、と普段なら思わないことを考えるが、そういう時に限って姿を現さない。  オレは大人しく、毛布の上で寝転がることにした。  飯を貰ったことによって、アイツはオレを殺さないだろうと、少し余裕を持ったが故の油断だった。  しばらく時間が経ち、ようやくアイツは帰って来た。  離れたところで見ていたオレは、ヤツが何か持って帰ってきていることに気づき、目を凝らす。  それは昨日、ヤツが殺した死体の首だった。  ひゅっと息が詰まり、ヤツが殺人鬼であることを再認識させられる。  胴体の方はどうしたのだろうと、もう少し観察してみた。  男は泥だらけ。  もしかしたら昨日のスコップで、身体の方は埋めてきたのかもしれない。  だが、それならどうして首だけを持って帰って来たのだろうか。  不可解な男の行動に、オレは首をかしげる。  男は人数分の首を適当に置くと、何枚か布を持ってきて、それで頭を一つ一つ手際よく包んでいく。  そして紐でギュッと布を閉じ、それを外へと運んだ。  屋根の突き出たところに紐を結び、ぶら下げられた様子を見て、オレは気づいてしまう。  男は、てるてる坊主を作っていたのだ。  人の生首を使って。  さらに言えば、男の恰好も、てるてる坊主に酷似しているように思えた。  でも何故そのような姿をしているのか、見当もつかない。  分かることは、コイツはやっぱり頭が可笑しいということ。  自分は本当に助かったと言えるのか、少し自信がなくなり、逃げ出したい気持ちが再燃する。  全ての生首坊主を吊るし終えた男は、視線をオレに向けた。  思わず目を逸らす。  頼むから、どうかオレを標的にはしませんように。  ねこてる坊主にだけは、なりたくない。  そんな思いの末、オレは人間がするように、お天道様に祈りを捧げた。
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