対決の記憶

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 *  「お弁当、食べ損ねたんです」  西見凛は、そう言って赤身のステーキを注文した。  夜のファミレスで、つぐみは凛と向き合って座っている。  コンビニからの帰路、突然声をかけられたのだ。  「いつまで付き纏うつもりですか」  「偶然よ。ここ通り道なの。  でも良かった。出直す手間が省けたわ」  凛は軽い調子で言うと、ステーキを頬張った。  この時間でも店内は賑わっている。  背もたれが高いテーブル席が多く、騒音で会話に苦労することはない。  ──この女、何を言いにきた?  つぐみは、ゆっくりとホットティーを口に含んだ。  「五百扇さんはまだ岐阜です。  遺体の鑑定中。でも、すぐ分かると思いますよ」  そう言って一旦言葉を切り、凛はステーキにナイフを入れた。  「雪彦さんのDNAと照合すれば。  何と言っても家族……一卵性双生児ですから」  だから何だというのか。  つぐみは、ステーキを口に運ぶ凛を盗み見た。  凛が、ふいと顔を上げる。  つぐみと目が合うと、口の端についたソースを指で拭った。  「彼氏の話をしてるのに、あまり興味が無さそうね。  前から思ってたの。あなた、雪彦さんを愛してないでしょう」  つぐみが予想だにしない切り込み方だった。  この女は雪彦を、事件を追っているのではなかったのか。  つぐみは身構え、下から(すく)うような目つきで凛を窺った。  「そう! その顔、その目よ! 直接確かめたかったの」  高らかな声が浴びせられる。  「あなた、顔変えてないでしょ」
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