対決の記憶

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 決まりだ。  あの表情(かお)。 風岡つぐみの、あの顔を見て確信した。  これは凄い記事になる。  西見凛は、夜風を切って歩いていた。  さっき水を浴びせられて濡れたスーツの胸元は、もう乾き始めている。  しかし、まだ分からないこともあった。  当時18歳の少女に、五百扇泰造を撲殺するほどの力があっただろうか。  そして、1とどうやって示し合わせたのか。  ただ、逃亡後の手続きを東京湾の魔女に頼んだのは間違いないと思われる。  盗まれた1億円。半分に分けたとして5千万。  手続きの相場が3千万なら、手元にはまだ2千万が残る──。  いつも寄るコーヒーショップに入った。  ブレンドを注文する。  持ち帰って、ゆっくり飲むのが日課だった。  混雑する受け取り専用のカウンター。  そこで何者かによってカップがすり替えられたことに、店員も凛自身も気づいていなかった。    「綿貫さんからだ……」  自宅に着いて、数分前の着信に気づいた。  現地で、きつい言葉をかけてしまったことを思い出す。  折り返そうとしたところで、スマホが震えた。母親からだ。  「ああ、お母さん? うん、元気」  目元を少し緩め、凛はパソコンの電源を入れる。  傍らに、あのコーヒーを置いた。  「あのさ……お見合いの話、進めてくれる?」  話しながらカップを持ち上げる。  「そんなに驚かないでよ。  今の仕事、キリがつきそうなの。もうすぐ……」  そう言って、凛はコーヒーを口に含んだ──。
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