対決の記憶

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 *  「つぐみ? どうした、真っ青だよ」  雪彦に声をかけられて我に返る。  つぐみは曖昧に笑い返した。  しかし、その作り笑いはすぐに複雑な表情へと変化してしまう。  ──真実を知る者は、もういない筈。  つぐみにとっては願ってもない状況が、かえって恐怖を増幅させた。  都合が良すぎるのだ。  「送って行こうか? それより、ここで少し休んだら?」  優しげに肩を抱いてくる雪彦を振り切るようにして、つぐみは部屋を出た。  まさか雪彦の犯行では、と考える。  凛には相当しつこく付き纏われていた。  5年前の事件について、嗅ぎ回られては都合の悪いことがあったのではないか。  しかし。つぐみは重たい気分でそれを否定する。  あの日、雪彦はまだ岐阜にいた。  他に誰がと考えて、つぐみは愕然とする。  最重要容疑者は、他でもない自分ではないか。  あのファミレスでの出来事は、多くの人々に目撃されているに違いない。    ──雪彦の傍には、もういられない。
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