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1.タクヤのヒミツ
超能力を知っているだろうか?
手をふれずに物を動かす『サイコキネシス』
一瞬で場所を移動する『テレポーテーション』
言葉を発しなくても、頭で思ったことを伝える『テレパシー』
これから起きることがわかる『未来予知』
……などなど、超能力には、色んな種類の能力がある。
このような能力が使える人間を、超能力者という。
カッコよくカタカナでいうと、エスパーってやつだ。
オレの名は、朝丘タクヤ、十一歳。
勉強も運動も平凡なただの若宮小学の六年。
だけど!
なんと!!
超能力を使うことができるんだ!!!
つまり、オレってエスパーなんだぜ!!!!!!
………………へっぽこだけどな。
*
「お兄ちゃん、ありがとう!」
「ああ、次からは気をつけるんだぞ!」
低学年の男の子が、手をふりながら駆けていく。
オレは苦笑しながら、手をふりかえした。
なにがあったのかというと、男の子が道ばたの側溝に、五百円玉を落としてしまったのである。
男の子はべそをかきながら、一生懸命、側溝のフタを開けようとしていた。
だがフタは重くて、まったく動かせることができない。
……五百円。
大金だよなぁ。
五百円があればマンガ雑誌を買うことができるし、お菓子をたくさん買うこともできる。
あきらめられるわけがない!
そこで、たまたま通りかかったオレが、側溝から五百円玉を拾ってあげたわけだ。
もちろん、オレにも側溝のフタを持ち上げることなんてできないぞ。
穴の部分に指をつっこんでフタを持ち上げようとしたけど、ピクリとも動かなかった。
なら、どうやって五百円玉を拾ったかというと……。
「よし、誰もいないな」
まずオレは、あたりをキョロキョロと見わたした。人がいたら大変なので。
「……やっぱり、取れないのかな?」
男の子はひどく悲しそうな顔でオレを見てくる。半分泣きそうだ。
これは、急がないとやばい!
「まて、あわてんなって…………あ、あんなところに、空飛ぶ黒猫の集団がいるぞ!」
「えっ! どこどこ?」
オレが空を指をさすと、男の子は釣られて空を見た。
(よっしゃ、いまだ!)
そのすきに、側溝に落ちていた五百円玉に向かって、全力で念じる。
(浮き上がれ! とっとと浮き上がりやがれ!)
すると、五百円玉はフワフワと浮き上がり、側溝のフタのすきまを通りぬけて、オレの手の中におさまった。
「そんなの、いないじゃん」
「ああ、ごめん、ごめん。見まちがいだったみたいだ。それより、はい、五百円。拾っておいたぞ」
「え、ウソ! わーい、やったー!」
五百円玉を受けとった男の子は、大よろこび。
オレはその姿を見て、うれしくなった。
やっぱ人助けをするって、気分がいいぜ。
タマキとの約束を破ってしまったが、これなら許してくれるだろう
あ、タマキっってのは、オレの幼なじみの女子で、本名は佐倉タマキ。
ちょっと怒りっぽくて、説教臭くて、食いしん坊だが、いい奴だ。
「さ、腹もへったし、帰るとするか」
オレは上機嫌で、鼻歌まじりに歩きだした。
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