5.はじめてのデート

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5.はじめてのデート

 約束の日曜日。  オレは早足で若宮広場の中を歩いていると、ドーム状の建物が見えてきた。  今日のデートの待ち合わせ場所は、この建物――若宮市立天文台の入り口付近である。 「早すぎたかな」  腕時計を確認してみると、待ち合わせの十五分まえ。  少し早すぎた。  でも、遅れるよりはいいだろう。  水瀬が来るのを待っていようとしたら、 「朝丘くん、おはよう」  と、うしろから声をかけられた。  ふりむくと、水瀬が立っていた。 「お、おはよう。早いな、もう来ていたのか?」  水瀬の方が早かったことに軽く驚きながらも、とりあえずあいさつをした。 「とても楽しみにしていたから、早くきちゃった。今日はよろしくね」  水瀬はほほえみかけてくる。 (うわ、やっぱ、かわいいよな)  白いカーディガンとライトブルーのロングスカートがよく似合っている。  笑顔といっしょに、キラキラした粉がまっているようだ。  とても自分と二人っきりでいていいような子には思えない。  心臓の鼓動が早くなってきた気がする。 「……よ、よし、さっそく中に入るか!」 「うん」  内心ではかなりドギマギしていたが、できるだけフツーなふりをした。  タマキと遊んでいるようなものだ、とがんばってそう思いこもうとする。  白いドーム状の建物に入ると、入り口でプラネタリウムのチケットを買う。  水瀬はチケットといっしょに受け取ったパンフレットを、大事そうに抱えていた。  「楽しみだねー」 「ああ」  水瀬の口調がはずんでいた。  すごく機嫌が良さそうである。 (水瀬って、よっぽどプラネタリウムが好きなんだな)  今日のプラネタリウムというのは、水瀬のリクエストであったのだ。
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