5.はじめてのデート

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 子どもたちが去っていくと、水瀬が「おつかれさま」と言いながら、ハンカチを取り出して、オレの額の汗をぬぐった。 「……あ、ありがとう」  タマキがタオルを放り投げてきたことはあったが、女子にこんなことをされるのははじめてだ。  うすいピンク色のハンカチから、フワッといい匂いがただよってくる。  だまっているのが、気恥ずかしい  水瀬から顔をそらして、話しかけた。 「小さい子の相手、慣れてるのか?」 「うん、弟がいるからね」  水瀬がうなずく。 「それにしても、よく『アラーム』だって、わかったな」 「朝丘くんが、すっごくあわてていたからね。わたしのときと同じだなって」 「そっか、助かったよ。おかげで、だれもケガしなかった」  水瀬が子どもの気をそらし、オレが超能力でボールを落とす。  なかなか見事なコンビネーションであった。 (そういや、あのとき水瀬の声が聞こえた気がしたんだよな……)  気のせいかもしれないが、水瀬に聞いてみようとしたら、  ぐぎゅるうううう~~~~。  オレのお腹が、ハデな音を立てた。 「ふふっ。すぐにお昼にしようね。甘いものも用意してあるよ」 「……頼む」  オレはいたたまれない気分でうなずいた。 (この欠点……マジでイヤだ!)  全力で超能力を使ったので、体はクタクタだし、お腹はペコペコである。  広場につくと、芝生にシートをしいて、水瀬が弁当を広げる。  この弁当は、わざわざ水瀬が作ってきてくれたのだ。  ナプキンに包まれた水色の弁当箱を開けると、おにぎり、たまご焼き、とりのからあげ、ソーセージなどが、きれいにつめられている。  オレが好きだと教えたおかずが、いっぱいにつめこまれた、夢のような弁当だ。 「おお、すげー! うまそう!」 「いっぱい作ってきたから、遠慮なく食べてね」 「サンキュー、いっただきます!」  言われなくても、オレに遠慮するよゆうなんてない。  まずは、からあげをひとつ、パクリと口に入れる。 「………………!」  そこからは、とまらなくなった。  次々と、ハシをのばす。  口いっぱいに、ほおばる。  からあげはサクサク。  ソーセージはジューシー。  たまご焼きは、甘めの味つけ。  おにぎりの具は、甘じょっぱい焼きたらこ。  好きなおかずが、おいしく調理されている。  オレはグルメなわけじゃないが、水瀬がとんでもなく料理がうまいのはわかった。  気づいたら、料理がなくなっている。  夢中になって食べていたので、あっという間に、食べ終わってしまった。  超能力を使ってお腹が空いていたせいもあるが、ホントにおいしかったのだ。 「これ、デザートのマドレーヌを焼いてきたんだ」 「おおっ、サンキュー!!」  甘いものまでカンペキである。  超能力で消耗したエネルギーをおいしく補給できたので、オレは元気になってきた。 「どうだったかな?」  水瀬が上目づかいで聞いてくる。 「いや、もう、サイコーだった! こんなうまい弁当は、生まれてはじめて食べたぞ!」 「それは、オーバーだよ。でもよかった」  オレの言葉に、水瀬はうれしそうに笑った。  午後は、広場の近くにあった大きな池で、オレたちは貸しボートにのった。  最初は、二人でオールを一本ずつ持ちながらこいでみたけど、オールの操作がむずかしくて、なかなかまっすぐに進まない。  だけど、それがとてもおかしくて、二人でゲラゲラ笑っていた。  けれど、しばらくして操作に慣れてくると、ボートは思うように動けるようになる。  ゆったりと池の上をただよいながら、二人でのんびりとした時間をすごした。  他にも、小動物にさわることができるコーナーなどで遊んでいるうちに、気づいたら夕方近くになった。 「そろそろ帰るか?」 「そうだね」  二人で並んで歩き、今日あった楽しかったことなどを話す。  話すことはいくらでもあって、会話がとぎれることはなかった。
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