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6.水瀬の告白
しばらく二人で歩いていると、いつもの学校の通学路である川沿いの道まできた。
「ちょっとだけ、そこによっていい?」
水瀬が、河原の方を指さす。
こないだ、タマキとテスト勝負をしたあたりだ。
「……え、ああ、いいけど」
(こんな場所に、なんの用があるんだ?)
オレは不思議に思ったが、河原におりていく水瀬に、ついていく。
河原には、まったく人がいない。
普段も人が少ない場所だが、こんな時間だからだろう。
水瀬は川に向かって歩いていたが、突然クルッと向き直る。
そして、オレのことを、真剣な目で見つめてきた。
「朝丘くんは、超能力を自由自在に使えたら……どうする?」
「……えっと、どういうこと?」
オレは質問の意味がわからず聞き返す。
「どんなものでも持ち上げることができる『サイコキネシス』。どこまでも移動できる『テレポーテーション』。そんな超能力を使えて、しかも、いくら使ってもお腹がへらずに使い放題になったら、どうする?」
ああ、そういうことか、とオレはうなずいた。
「そいつは便利そうだが、今と変わらないと思う」
「どうして、便利な能力を使い放題なんだよ?」
不思議そうに首をかしげる水瀬に、オレは苦笑した。
遅刻しそうになっても、学校まで『テレポーテーション』で移動。
寝っ転がったまま、お菓子やマンガを『サイコキネシス』で持ってくる。
オレもそんな生活にあこがれたことがある。
でも、そんなことをタマキに話したら、めっちゃ怒られた。
そんな力に頼っていたら、どうしようもない『ダメ人間』になるって。
そのときはケンカになってしまったが、今のオレにはわかる。
あのときのタマキが正しいのだ、と。
仲直りのために、小遣いをはたいて、タマキの好きなお菓子をたくさんかかえていったのも、今となってはいい思い出だ。あいつとした、最初で最後の大ゲンカだ。
「超能力ってズルじゃん。こんなのに頼っていると『ダメ人間』になっちまう。だから、今ぐらいがちょうどいい。チャンスがあれば、ちょっとした人助けをしたりする程度でいいよ」
オレは、以前にタマキと話しあったことを、水瀬に話して聞かせる。
すると水瀬は、うれしそうに「うん、うん」となんどもうなずいた。
「よかった、朝丘くんがそういう考えの人で。これなら……わたしのヒミツを話せるよ」
水瀬は小さな声でつぶやくようにいうと、首にかけていたペンダントを外して、服の中から取りだした。
銀色のチェーンのペンダントで、先端にはピカピカの青い石が飾られている。
「なんだ、それ?」
「この石は『サイキックストーン』というの。お父さまに誕生日プレゼントにもらったのだけど、かなりめずらしい石なんだよ」
「……そうなのか、きれいだな」
(なんで、いきなりアクセサリーを見せられてんだ? 自慢……じゃないよな。そんなことしそうな奴じゃないし)
さっきから、ヘンな質問をしてきたり、水瀬がなにをしたいのかわからずに、オレの頭の中はクエスチョンマークであふれていた。
オレのそんな疑問におかまいなしに、
「朝丘くん……、わたし、告白したいことがあるの!」
水瀬はとんでもない爆弾発言をしてきた。
(えぇえええええええええっ!!!)
告白という言葉に、オレの頭の中は一瞬で沸騰してしまう。
パニックである。
(待って……待って!)
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